体罰がパフォーマンスに与える影響

スポナビブログ廃止に伴い、記事を移動しました。(2013年1月16日投稿)

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先日、大阪の桜宮高校バスケ部で起きた痛ましい事件によりいろんな方が体罰について述べていらっしゃいますが、ここでは体罰が心身の機能に及ぼす影響について述べていきたいと思います。

以前の記事「決定的な場面でシュートを外す理由」からの抜粋になりますが、人間には恐怖反射という反応があります。

ここから抜粋

人間には恐怖や不安を感じると、頭を押し下げて、脊椎を圧迫する動きが起こるというシステムが備わっています。

これは恐怖反射としても知られていて、恐怖に対する防衛反応のひとつです。
急所である首やお腹を守るために身体を縮めて固まるのです。

これは動物にも見られる現象です。動物の場合は危険が過ぎ去るまでじっとしていればいいのですが、サッカーの試合中にこれが起きると困ってしまいます。

動物の場合は目の前に現れた現実の危険物、主に捕食者に対してこの反応が起こるのですが、人間の場合、とても発達した脳があるために、実際にその瞬間には存在していない恐怖を作り出すことができます。

例えば、「もし、このシュートを外したらどうしよう」=将来に対する不安。
「絶対に決めるぞ」=決まらない可能性を暗に認めているから、その不安を隠そうとしている。などです。

このような不安や恐怖心が起こると、微妙にですが身体は縮こまり、手足の動きが制限され、いつも通りの動きができなくなり、ミスが起こるというメカニズムが働くのです。

抜粋終わり

みなさん、選手が体罰による恐怖にさらされていると何が起こるかはもうお分かりだと思います。

選手はミスすると体罰が与えられると思うようになり、常に恐怖反射が起こった状態でプレーするようになります。そして、どんどん恐怖で身を固めて、本来の力を出せなくなります。

心と体の仕組みからみると体罰は明らかにパフォーマンスに対して悪影響があることが分かります。

では、なぜ体罰が現場で使われてきたのでしょうか?

恐怖を与え続けることで人は常に体を緊張させるようになります。

過度な緊張が続くと気持ちを感じることができなくなり、恐怖を与える者の命令に考えることなく従うようになります。

これは、元々は司令官が突撃と命令したら、何も考えずに行動できる兵士を作るための訓練方法だったようです。

あまりレベルが高くないスポーツでは「勝つ」という目的を手っ取り早く達成するためにこの方法は有効でした。

一糸乱れないでチーム戦術を遂行できるチームを作ることで勝ててしまう。

そして、その指導者が賞賛され体罰が肯定されるということが起こっていたのだと思います。

又、組織の歯車となれる人材を育成することが求められていた時代背景ともマッチしていたと思います。

では、レベルが高くなるとどうなるのでしょうか?

例えばサッカーでは、以前はワールドカップなど夢のまた夢という状況だったのが、日本代表が強くなりアジアで勝ってワールドカップに出られるようになりました。しかし、世界レベルにおいては、個々のレベルが高くないので戦術に頼るという方法では勝てないという現実に直面したのです。

そこで、サッカー協会や多くの指導者達が個人の能力・判断力を伸ばす指導を行うようになり、国内の様々なカテゴリーの大会の競技レベルもアップしてきました。最近では選手の判断がなく、蹴って走るだけのチームはなかなか勝てなくなってきているようです。

(*選手の判断がないチームで必ず体罰が行われている訳ではありませんが、体罰や恐怖で統制されているチームでは多くの選手が思考停止状態に陥っています。)

これらの取り組みにより本場ヨーロッパで活躍する選手が増え、日本のサッカーのレベルは上がり続けています。

選手一人一人の能力を伸ばして、個々の自由な発想が集まって1つの有機体として動くことができるチームを作るには時間が掛かります。

しかし、世界で勝つためには近道はなく、時間をかけて選手一人一人の能力を伸ばして全体のレベルを高めていくしかありません。

今まで日本のスポーツ界では指導者が選手や親御さんから評価されるということはあまりなかったと思います。しかし、このようなことを知っていただくことでスポーツの指導者が評価・淘汰され、指導のレベル及び、競技レベルが上がってくることを期待しています。

最後になりますが、体罰による指導は心と体の仕組みからみてもパフォーマンスに悪影響を与えるということ。そして、時代が求める人間像が組織の歯車ではなく、自分で考えて道を切り開いていくことができるというものに変わってきているということ。この2点を子供を持つ親御さんには指導者を選ぶ際の参考ししていただけると幸いです。

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